ご挨拶

私たちの研究グループでは,人間の乳幼児が環境との相互作用を通してどのように社会的認知機能を獲得するのかを,構成的アプローチから研究しています.神経回路モデルや確率的ベイズモデルを利用してロボットが認知機能を獲得するメカニズムを開発することで,人間の認知発達を支える神経基盤の理解を目指します.

認知発達の基盤として私たちが提案しているのは,予測符号化に基づく計算論的理論です.人間の脳は,環境からのボトムアップな感覚信号と内部モデルに基づきトップダウンに予測した信号の誤差を最小化するように構成されており, 自己の運動経験を通した内部モデルの更新や,環境への働きかけによってそれを実現していると言われています.私たちは提案する予測符号化理論を工学的に検証し,本理論によって発達のどの側面が説明できるのかを明らかにするため,発達の諸段階に着目したさまざまな認知機能,例えば,自己認知や自他識別,模倣,他者の意図や情動の共有,他者への援助などの能力を獲得するロボットを開発しています.

また,発達障害者のための理解・支援システムも提案しています. 発達障害の一種である自閉スペクトラム症(ASD)者の多くは,知覚過敏や知覚鈍麻などの非定型な知覚特性を有しており,それが社会性の困難さにも影響すると示唆されています.私たちは計算論的技術を応用した認知心理実験を実施することでその感覚・神経機序を明らかにし,さらにASD者の知覚症状を再現する装着型体験シミュレータを設計することで,定型発達者がASD者の困難さを第一人称視点から共有できるシステムを開発しています.このようなアプローチにより,社会的認知発達とその障害のメカニズムをより深く理解し,それに基づいた支援技術の設計原理を提案します.

研究にご興味のある方,そして一緒に研究に取り組みたいという研究者や学生の皆さんは,ぜひご連絡ください.

長井 志江
情報通信研究機構脳情報通信融合研究センター 主任研究員
ビーレフェルト大学 客員教授

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