科学研究費補助金 特別推進研究 「神経ダイナミクスから社会的相互作用に至る過程の理解と構築による構成的発達科学」
(研究代表者:浅田稔,研究期間:2012年5月−2017年3月)
ニューロンレベルのミクロな活動がいかに人間レベルのマクロな行動に反映されるかは分野を超えたビッグミステリーですが,理解の程度が既存分野の域に留まっている現状があります.すなわち,医学や神経科学では微細な構造の説明に終始しがちで他者とのやりとりのようなマクロな構造に関する知見は少なく,また逆に認知科学や発達心理では行動観察が主であり,内部のメカニズムの説明に至りにくいのです.全体像を把握するには,学際融合が必須です.私たちのグループはこれまで,脳神経科学や心理学などで蓄積された知見に基づき,様々なレベルの構造を有した計算機シミュレーションやロボットを実際に作ることを通じて,メカニズムの詳細部分から実際の挙動までの系全体を見ながら新たな理解を得ようとする試みを行ってきました.
本研究では,人間の認知発達の大基本問題である「自他認知」の課題に特に焦点をあて,リアルな身体を備えた脳の発達の大規模計算機シミュレーション,ニューロンの集団活動を脳波や脳領域の賦活として捉えるイメージング研究,人間に酷似した筋骨格系ロボットの構築,ロボットを持ち込んだ二者間の相互作用の心理/社会実験を融合的に行いながら,自他認知に関わる一連の発達過程の構成的理解を得,神経ダイナミクスから社会的相互作用に至る過程の理解と構築による構成的発達科学を確立することを目的とします.