予測符号化に基づく発達障害仮説

自閉スペクトラム症などの発達障害は社会的なコミュニケーションの問題として特徴付けられているが,近年の認知神経科学研究や当事者研究により,その原因が社会性以前の感覚運動信号処理の非定型性にある可能性が指摘されている.本研究では,人間の脳の基本的機能とされる予測符号化に基づき,発達障害の発生原理を計算論的アプローチから解明することを目的とする.予測符号化とは,環境から感覚器を通してボトムアップに入力される信号と,脳が過去の経験や知識,また他の感覚からの信号をもとに,内部モデルを通してトップダウンに予測する信号の誤差を最小化するように,情報処理を行う仕組みである.
本研究では,予測符号化を具現化した回帰型神経回路モデルを用いて,発達障害者の脳の機能不全をモデルの学習パラメータの変動として再現することで,発達障害者の行動様式が再現されるかを検証する.また,そのときに獲得されるモデルの内部表象にどのような特徴(非定型性)があるかを調べることで,特定の行動様相を生み出すモデル構造を明らかにし,発達障害者の神経基盤の理解に貢献する (Philippsen & Nagai, 2018).

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