共同注意の発達

共同注意とは他者が見ているものを同時に見ることであり,言語能力や心の理論などの様々な認知機能の発達の礎と言われている.人間の乳幼児は生後18ヶ月までの間にこの能力を獲得することが知られているが,それがどのような神経基盤によって生じるのか,また環境からの働きかけが共同注意能力の発達にどのような影響を及ぼすのかなどは明らかになっていない.本研究ではこれらの問いに答えるため,神経回路モデルをもちいた感覚・運動信号の随伴性学習に基づき,ロボットが環境との相互作用を通して共同注意能力を獲得するメカニズムを構築した.

発達的制約を利用した共同注意の学習

認知発達学では,乳幼児の知覚運動能力の発達と養育者の適応的な応答(発達的制約)が,乳幼児のタスク学習を促進していることが指摘されている. 本研究では,乳幼児を見立てたロボットの視覚機能の発達とそれに応じた養育者の適応的な評価が,視覚運動の対応関係によって表現される共同注意能力の学習を促進するモデルを提案する (Nagai et al., 2006).

知覚運動の随伴性の検出に基づく共同注意の学習

乳幼児のタスク学習では,養育者が常に適切な評価を与えているとは限らない. 本研究では,乳幼児に見立てたロボットが,知覚運動経験から環境に内在する随伴性を自律的に検出することで,養育者からの評価なしに共同注意能力を獲得するモデルを提案する (Nagai et al., 2003).

自己と他者の動き等価性を利用した共同注意の学習

原初的な共同注意は他者の意図の理解を伴わず,反射的な運動模倣から始まることが指摘されている. 本研究では,視覚入力からオプティカルフローで検出される他者の動き特徴と,それを模倣する際のポピュレーション符号化された自己の身体運動の等価性を利用することで,早期に共同注意能力を獲得するモデルを提案する (Nagai 2005, 長井, 2007).

エッジとオプティカルフローを用いた指示的ジェスチャの理解学習

他者のリーチング,タッピング,ポインティングの理解能力は,発達的にこの順序で獲得されることが指摘されている. 本研究では,これらの動作を観察した際のエッジとオプティカルフローの相補的な情報量を考慮することで,上記の発達的変化を再現することのできるシステムを提案する (Nagai, 2005).

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